ドン小西:僕なんか基本的に、デザイナーになろうと思って。スイッチ入ったのは、大学サボりながら行ったローマだったね。72年ぐらい。
桂由美:ビートルズ全盛期
小西:ビートルズって、一つの完成品になってるわけ。でも向こうへ行くとグラムロックやってる。あれはもうびっくりしますよ。生々しいんですよね。
桂:私らの時は、モデル・伊東絹子がミス・ユニバースで第3位になって。何年かあとに、宝田明さんの奥さんになった児島明子さんが第1位。ファッションモデルが当時のファッションアイコン。
丸山:そういう話、大好物。僕多分くるっと一回転して、そういう時代のそういうものにすごく憧れがあるんですよね。簡単にスターになれない時代だからこそ、ものすごくカリスマがある人しかなってない時代じゃないですか。セレブリティを通してみんなに知ってもらうって大事。
小西:挑戦でもあったね。ビートたけしさん、あれきっと誤解もあったのよ。(←80年代、ドン小西デザインのニットを毎日のように着てた)エスカレートしちゃった。
丸山:ずっと着てくださってた。
小西:無理になっちゃった時もあった。闘いだったね。「来週着る」「どうだ!」「どうだ!」全部糸から作ってますよ。1枚のセーターに500素材入ってるんですから。実は内部事情があってさ、お金なくって、糸屋さん全部東京都のゴミ袋あるじゃない?あれ50リットルもらっていくわけ。スピーカーの後ろの線、物によっちゃ柔らかいのよ。糸って棒で編んじゃえばなんでも。そういうことやったな。生きようと思うと人間てどこでも生きられるんだなって。
丸山:でもクリエイティブですよね。
小西:今のね、素材も何もないようなさあ 一万円握りしめてちょちょっと行ったら全部揃えられちゃうってのはいいのか悪いのかね。僕は、ああいうファストファッション、ファストフードもそうなんだけどモードとは別だと思ってる。衣料品だよね。破けちゃったから着ない、穴があいちゃった。インフラみたいなもんじゃない?むしろ僕が怖いのは、若者たちが、10代20代をなんでも吸収しちゃえってファストフードファストファッションで過ごしちゃったらどう?最低だよね。
丸山:あれはあれで理にかなってるっていうか。やすく便利で気軽に買えて。でも手がかかってる服は心も人生も豊かに変わるのを啓蒙していきたい。1万円と千円のものの違いを体験してもらいたい。
小西:そこに値がついてるんだよね。
桂:日本て、芸能界のことがすぐニュースになって、ファッションで我々が凄くいいことやってもニュースにならない。ローマのコレクションに参加した時、私たちって新参者だけどテレビがちょこちょこやるわけ。翌日タクシーの運転手が「昨日あなたのショーやってましたよね?何番目のあれがよかった」きいたとき愕然としましたね。寒気がしました。日本ではやらないから。
丸山:イタリアでは産業をすごく重視してるから、国をあげてパリコレとかだって普通に新聞、ニュースで。産経新聞(のようなもの)じゃなく、ちゃんと一般紙でされているから。ファッションは乖離したものじゃなく、普通の人のところにも情報としてある。日本は、今はタイアップ。お金。
小西:スタイリストの質もあるんじゃない?
丸山:シーッ
小西:芸人さん、ひな壇で男の子がバカみたいに今時ノーネクタイで。芸人さんでポケットチーフだけ。あれスタイリストが行って何万円って取ってるんでしょ。あんなクソみたいなんだからダメになるんだよ(笑)女子アナだってダサい。いろんな海外のテレビ見ると日本はダサい。請け負ってる2~30名のスタイリストがダメにしてる。政治家見てると、誰とは言わないけど鳩山! 自民党から民主党に変わって、あれ、30年前の型じゃん。自分の肩幅のスーツが、20年前30年前では古いって取り巻きも誰も言わねぇんだよ。それで「これからの日本は」って。お前の肩直せよ。
桂:丸山さんだとどんな人に自分の着せたい?
小西:多いでしょ
丸山:浅田真央さん。
桂:私も。品がある。きゃりーぱみゅぱみゅも好きですよ。
小西 :俺からいやあ、暴走しすぎちゃってる。 手放しで可愛い可愛いって言っちゃダメ。ファッションは自国のバロメーター。見てくださいレディ・ガガ。俺は怒っちゃったよ。あれは裸。みんないいって言ってるけど普通の人がやったら公然わいせつ。
丸山:正しく馬鹿野郎って言ってくれる人もいないとやってて意味がない。僕自身、借金もして会社も一つ潰してますし。ホントに小西さん、わかりますもん。それを経てなおファッションのことをきちっとやってらっしゃるのは今まで言ったことないですけど、すごく尊敬してます。
桂:小西さんのように波乱万丈じゃなかったけど初めてショーやったのが1965年。それから10年間給与一切もらってなかったの。4人の社員にお給料払って。石原慎太郎さんが私のこと紹介する時「ウエディングドレスで、ビル建てたひとです」って。違うんで。借金をして建てたんで。私の仕事を喜んでいる人がいる限り、私は辞めない。桂由美なんて古いから着たくないよって言われたらおしまい。日本は欧米の焼き直しが多いですね。
丸山:ブライダル業界のビジネスのスタイルができちゃって難しい。
桂:地味婚はまだいいんだけど、婚礼をやらない「無し婚」ね。式場であげる人は55%しかいない。芸能人がこっそりやるのは、何かあって離婚する時のため。「あんなに仲良かったじゃないか」って写真見せられたら。それを一般の人が真似しちゃダメ。私たちの世代は「クリスマスケーキ」って言葉があって。大学卒業する時にはワーっと縁談が来て結局流れたんですよ。誰も持ってこなくなった。仕事面白かったしやらなきゃいけないことがあった。40で「このままでいいのか、茶飲み友達が欲しい」って42で結婚した。人生観は変わりません。自分の食費だって毎月10万づつ出してたら「3年ほどストップしてくれないか」60で司法試験受けるって言うんです。大蔵省やめて、1年目は受からなかったので東大に再入学して死ぬまで弁護士やってました。
ちなみに10月9日はドン小西・水前寺清子・夏川りみの誕生日
追記:2016.7.9
サワコの朝に桂由美が出てて
仕事始めた頃、1年30件しか成立しなかったという話を。
披露宴の衣装の決定権、まだ夫側の親が持ってた時代なので
「ドレスじゃなくて着物よ」と言われてキャンセルした人が多かったのだとか。
当時は「嫁に入る」とされたので。
いま心に響く曲は秋川雅史「千の風になって」
自分の葬儀の時にはスケジュール空けて、この曲の生歌を
秋川さんに歌ってほしいそう。