樹木希林:どんなうちに育ったんですか?
寺田農:長崎アトリエ村。そこで生まれたんですね。 (父はシュールレアリズムの洋画家・寺田政明)
樹木:私なんか神田の神保町。父親は警察官で、母親はカフェやってた。
●樹木希林
父の薩摩琵琶の音色 中谷嚢水
※警察官をやめる薩摩琵琶奏者に。門前の小僧で「翔ぶが如く」の中で曲をつけてもらって演奏したのね。後に仕事になったってのがすごいわね。あたしどんな子供だったってね、自閉症でね、口をきいたことがなかったの。
寺田農:当時は自閉症なんて言葉がないから、なんだったんでしょうね
※注:場面緘黙(かんもく)なのかも。
文学座の試験、受かるとは思わなかったの。「新劇はブスでもいい」と思って。「あなたは耳がいい。人のセリフを聴いてる」と言われた。あとになって、美男美女だけど随分耳の悪い役者がいて。
寺田:「一人ぐらいロカビリーがいてもいいんじゃないか」って言われて受かったの。
アカシアの雨がやむとき 西田佐知子
アトリエのそばをデモ隊が来るの。文化人のデモ行進。その横を杉村春子さんが通る。
この西田さんの・・成り行きの人生でしたよね。
森繁の人生讃歌 森繁久彌
味がありますよね。歌ってもっと上手なものだと思ってたから。「アアタね、新劇は本当に嫌だよね。新劇は嫌だ」って。あたしゃ新劇の人間でしょ。森繁さんの芝居見たときびっくりしたのね。森繁さんのそばに寄れなかったの。でも、あたし、いいものいっぱい見ましたね。
※「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」は悠木千帆名義。
2番煎じの「ばあちゃんの星」てのもあった(←ずうとるび共演。75年頃。)
でも強烈な印象なのは「ムー一族」金田さん
昭和枯れすすき さくらと一郎
樹木:要するに面白くないから。何やっても。テレビ局もだんだん力つけてきて。でも局が大事にするのはちゃんとした立派なところから出てきた役者。もうこんなのなんて数のうち入らない。久世さんはペーペーで走り回って 同志っていう感覚があったのね。「昭和枯れすすき」が出たときふたりで「いいなぁ」って。中身がどうこうっていうよりメロディに癒される。生きらんないのよ。何見ても腹が立つ。ムカっとする。かまやつひろしさんが内田裕也さんを連れてきたのね。内田さんは楽器もできない、タンバリン叩くだけ、ヒット曲もない。
えばってる。
※77年、NETがテレビ朝日に社名変更
なんか売ってくれってテレビ局が言うんだけど、不動産じゃ安く売ったら損だし、名前を売ることにしたの。(悠木千帆)
内田啓子(本名)にしようとしたら「内田」はやめてくれって。
お化けのロック 郷ひろみ&樹木希林
・「ムー一族」打ち上げで、久世光彦が出演女優を妊娠させたことを暴露。 この件がもとで、久世と決別。「晒す」職業についてよかったのは、自分のことを俯瞰で見られること。
この曲が「夢千代日記」のあいだ中ずっと流れてきてて。
私なんか三味線ばかり。吉永さんはいいわよね、って言いながらずっと付き合ってきた。
自分の力量を超えたいからこの曲を使った。「天城越え」で上昇志向との対比を思い出す
●寺田農
KAW-LIGA ハンク・ウイリアムズ
伝説の人なんだけどね。僕の青春の歌で一番最初に入ってきた。FEN。アメリカのカルチャー。
寺田家の中で孫で男一人。軟弱極まりなかったね。
映画「ウエスト・サイド物語」より COOL
ミュージカルと我々のやってることはずいぶん違う。
その頃やってたのは「女の一生」だよ。旧態依然としてちゃダメだって。
ただ「キミ恋をしなきゃだめだよ」って、ただ研究所の中が乱れるだけの話でさ
なぜ恋をするのがいいか教えない。
樹木:あなたの芝居もすごかったね。「指の長さ、手の幅、一歩の幅」そういうセリフ覚えてる?
寺田:覚えてねーよ
樹木:そういう芝居して、下手な役者だな~って。つまんない役者だって。 山崎(努)さん、かぶれてなかった?山崎さんが来たなと思ったら寺田さんで。
寺田:僕だけじゃないけど真似して憧れた。
映画「突然炎のごとく」より つむじ風
ジャンヌモローが歌う歌。大好きなんだけれども。実相寺昭雄は早稲田の仏文だから。それで、覚えた。
樹木:あなたこんな感じの人と付き合ってたでしょ
寺田:つきあったね。時代なんだね。
肉弾のテーマ 佐藤勝
佐藤さんの音楽と僕が走っていく音が合わない1日やって僕も大谷さんも唇が青紫色。
俺主体性ゼロだから流されて。だんだん嫌になっちゃうんだよね。
その時三木のり平さんに出会うんだよね。
舞台の打ち上げで、当時カラオケなんかなかったけど「九段の母」踊るんだよ。
役者って芸ってこういうもんなんだと。できないんだよ。のり平イズムというか。
樹木:先生と思うからできないんだよ。あたしも森繁さんのこと先生と思ってないし。
僕と君は師弟じゃないな、君は冷めてるし、って。
オペラ「ファデリオ」より レオノーレ序曲 ベートーベン
オペラの朗読で新境地。
俺たちに明日はない より
明日の展望がないのね。
毎晩毎晩飲んで、遊びをせんとや生れけむ。
WOMAN~Wの悲劇より 薬師丸ひろ子
表現の原動力であり続けた、女性全てに捧げる曲。
68歳で33歳の一般女性と結婚。
寺田:ご主人が羨ましい。
人生の最期に聴きたい曲。
夢去りしとき、それは私があなたを愛することをやめるとき。