第1夜
桜井 反骨精神がないと、ロックミュージシャンになれないんじゃないかと思って。逆にその、恵まれた家庭環境がコンプレックスになっていた中学時代。でも、恵まれていたからこそ、自由にやれるんじゃないかな...親戚が、甲斐バンド、浜田省吾さんを好きで聴いていて、夏休みになると山形の従兄弟の家に遊びに行って、うみ、山の思い出と共に甲斐バンド、浜田省吾さんを聴いていたので、東京に帰っても聴くことで、楽しい思い出をよみがえらせた。
佐野 やがて、自分で曲をかき始める瞬間があると思うんですけど、その時の景色、何か覚えていることがありますか?
桜井 最初に曲を書いたのは高校1年の頃。中学のころから、バンドを組みたいと思っていて、プロのミュージシャンになるんだと。高校になって、初めてバンドを組んだのが、ほぼ今のMr.children。
佐野 詞が先にできるのか、曲が先にできるのか
桜井 曲ですね。たぶん曲が、訴えたいこと、歌いたいこと、叫びたいことのイメージを持って生まれてくるんですよね。メロディが頭の中でできて、なんとなくキーを決めて、自分の口でメロディ、例えば、ラララであったり、英語であったり、叫んでる。その口の開き方とか、声のかすれ方で、これは怒りなのかやさしさなのか、音から自分がもらうんですよね。曲を書くのは速い方だと思います。出来ないときは半年ぐらいできない。1曲これいいな、というのができたら、そこからパパパッと10曲ぐらい。そんな感じですね。
佐野 逆に詞ができない、曲ができないときはどうするの?
桜井 そんなこと考えないようにします。やらなきゃやらなきゃ、と決めつけちゃうと「書かなきゃいけないから書いた曲」が出来ちゃうのも嫌なので。
佐野 確かにそうかもしれない
桜井 意識が作り出すものを大事にしたいと思ってます。アスリートのイメージトレーニングみたいなものかな。プラス思考なんですねたぶん。
佐野さんがリーディングのために選んだ曲「タガタメ」
佐野 朗読すると非常に哲学な感じがするけど、一度聴いたら忘れられない曲でもあります。言葉だけ抽出して、他の人に読まれるってどんな感じ?
子供たちを被害者にも加害者にもしないため・・・これって、なんの事件をモチーフにしたんだろう。特定はしない方がいいけど。
桜井 特に「タガタメ タタカッタ」カタカナで表記している部分、メロディがあることで、音楽の中に溶け込んでいってたものが、詞だけで、言葉で語られると、意味が増すような、リアリティが増すような気がしますね。
「彩り」は視覚的な曲。
桜井 プロデューサーとメンバーと、次のMr.childrenについてミーティングしてて、世界の情勢がすごく揺れてる時で、世界に投げかけるようなメッセージを発信していったらどうなんだろう、という意見も出たりしたんだけど、その場では結論が出ずに帰って、一晩寝てトイレに入ったら、メロディとと共にこの詞がばーっと出てきて。世界にメッセージを発信することは僕は違うなと思ってたんだけど、なんで違うと思ったかがこの詞の中に全部あると思った。無意識が書かせてくれたような。気付かせてくれたような。特定な人、力を持った人が何かができるということじゃなくて、ちっぽけなことに喜びや楽しみを見出したり、ひとりひとりの感情の動きが大事なことなんだと思えて。
佐野 好きな言葉は
桜井 今日という日は 残された人生の 最初の一日
佐野 嫌いな言葉
桜井 難しい問題だよね
佐野 桜井さんがうんざりすること
桜井 健康を害する時
佐野 一番うれしいこと
桜井 チームプレーがうまく行った時
佐野 好きな映画は
桜井 きみに読む物語
佐野 他になりたかった職業
桜井 Jリーガー※答えた時の表情がすごくよかった。
佐野 絶対にやりたくなかった職業
桜井 総理大臣
佐野 ひとから言われて、カチンとくる言葉
桜井 下手になったね
佐野 カチンとくるよね(笑)女性から言われて嬉しい言葉は
桜井「かわいい」・・・すいません。
佐野 死ぬ前に、愛する人に遺す伝言
桜井 ありがとう、何にも悔いないです
元春さんて韻を踏む歌詞、「天頂バス」が好きなんだ。
桜井 歌詞を書き過ぎて、普段の自分がマヒしてるのかもしれない。ものすごいクサイことを平気で言えるようになっちゃったのかもしれないですけど。
佐野 スガシカオさんが「多分罪の意識がない人はいないし、そういうひとはソングライターにあまり向かないと思う」
桜井 言葉を通じて、個人であることを通り越したいような気がする。僕がコンプレックスを抱いてたり、好きな子が居るとか、どういう人格かとかを通り越して、音楽で人と人を結びつけたい想いがすごく強い。
佐野 名もなき詩の一節で、「愛はきっと奪うでも与えるでもなくて 気がつけばそこにある物」・・・これは同じソングライターとして名言だと思います。
桜井 詞が考えて考えて出来なくて、今日は走りに行こう、とランニングしてて、疲れて走ってて難も考えらんなくなった時に最初の1行ができて、そっからできてきた。2番のサビは自分でもすごく大事にしている。
第2夜
佐野 ポップソングは時代の表現であり、時代を越えたポエトリー。
今回は桜井さんがネタ帳持参。
桜井 とにかく書き殴り。もやもやをすごく大事にしてるので。メロディがなく、アイディアだけを書きとめておくのがひとつ。ネタ帳的な役割もするし、コンピューターに打つまでは、できるだけこうやって字で書きたいと思っていて。間違ってもアイディアを残しておける。パソコンとかだと訂正して、消えてなくなっちゃうんだけど、(手書きで)残しておいたものが、後々すごく大事な役割をすることがあるので。あとは、自分の感情のもやもやを、文字ごと気分ごとメモしておけるのがいい。
佐野 貴重なものを見せてくれてありがとう。これまで、桜井さんはたくさんの曲を書いてきたのだけど、ソングライターとして、これまで、いちばん、やったな、と手ごたえを感じた曲は、なんですか?
桜井「しるし」いくつかラブソングを書いてきたんですけど、別れの歌なのか、恋愛がうまく行ってる関係を描いたものなのか、どちらともとれる歌にしたいと思って作り始めたんですね。それがすごくうまくいったんですね。共に生きれない日が来たって”どうせ”愛してしまうんだ。の”どうせ”が自己満足なんですけど、うまく言えた。
佐野 微妙な表現は、観察眼がないと書けないけれど、日ごろから、人を見るのが好きですか?
桜井 好きですし、言葉以上に、相手が無意識にやってることに、ものすごく怖さを感じますね。一緒に食事して話してても、ふとした時に視線を外すとかされると、ああつまんないのかな、とか、自分でも気付かないぐらい退屈な思いをしてるんだろうな、とか、無意識の動作に意味を持たせて表現することが多い。
ベルリン・天使の詩を使ったワークショップ。
学生たちが悲劇的なワンシーンを見て、思いついたフレーズを書いてゆくんですね。
モノクロの箱の中で1日が終わろうとしている、とか、夕飯はシチューにしよう、とか。
桜井さんがピックアップしたもの、どっどど どどうど・・・
サウンドが聴こえる映像。親近感を感じる「CRY」
桜井作
スパークする感情のマイナス
掃除機みたいな轟きでもうかたっぽを吸い寄せてゆく
静かな光を放ちながら
学生からの質問:歌詞を書くとき、特別にしていることがあったら教えてください。
桜井 五感を使うことを大事に生活しているつもり。五感を使った方が、リアルに、臨場感を持って伝わるから。パン屋さんのことを書こうと思ったら、いいにおいが伝わってくるような、そんな詞を書きたいと思います。
タイトルはどういうタイミングで思いつくのか
桜井 作品を評価される前に、タイトルだけ、雑誌やテレビで目にされることが多いと思うので、その時にイメージしやすいもの、インパクトがあるものを選ぶことがあります。できるだけ、サビ頭、名もなき詩だったら、「あるがままの心で」というのをタイトルにするのは絶対に避けよう、と。
第三者のために音楽を作ってるのではないけれど、人が誰しも抱えてる問題を共有することで、救われたり励まされたりすることはあるんじゃないかな。自分自身を開放することで、誰かと繋がり、プラスに作用するのではないかな。
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アメトーーク Mr.Children ミスチル芸人 長谷部誠 - 別館.net.amigo