小林:ハシモトさん
橋爪:コイツ、俺のこと今でもハシモトさんて言うんですよ
樹木:役でね?
橋爪:役じゃないの、ただ間違うだけなの。橋爪て言えなくて
樹木:稔侍さん私と夫婦やって(NHK朝ドラ:はね駒)なかなかいい役者でしょ?橋爪くん
小林:任しときゃいいから
樹木:いい男でしょ、稔侍さん
橋爪:稔侍は、自分のこと二枚目だと思ってる昔から。超二枚目。だから伏し目がちがどうも好きらしい
樹木:そいで口はあまり開かないでしゃべるの
小林:開くと、覚えたてのセリフ忘れちゃうからさ(笑)
橋爪:もちろんイイ男だよ。それほど二枚目じゃない。ただ思うんだけど人柄がいいんだろうね。すごく愛されるの。今の山田洋次監督も、現場ではクソバカって呼んでるの稔侍さんのこと。な?
小林:(笑)早く終わらねえかな
橋爪:撮影所入った時から「早く終わらねえかな」言ってんの.俺告げ口してやったの監督に。そんなに現場で馬鹿だって言ってるくせに終わると「稔侍、うち来いよ」メシ喰わせんだ。俺は決して呼ばれない。監督と家近いだろ?でも呼ばれたことない。
樹木:どんな話してんの?監督と
小林:何もしないですよ
橋爪:むこうがしゃべってんの?何もしないわけにいかないだろ
樹木:ただ...ご飯食べてるんだ
(樹木希林が渡したハンカチで拭って橋爪功のポケットに突っ込む小林稔侍)
橋爪:俺のポケットに入れんなよ
樹木:こういう関係なんだ、いいねえ~
20歳の時には一軒家を持ってた樹木希林。
樹木:ケンカっぱやいの私。この業界でこんなにやってられるって思ってなかったのよ。ハナっから抹殺されると思ってたから。食いっぱぐれのないことは自分でしとこうと
小林:ご一緒さしてもらって、おっかさんよくケンカするんだよ、怒るんだよ。 一番すごかったのはマイクに向かって、ブースにいる監督に「バカヤロー!六本木界隈来るんじゃないよ!殺してやるからね!」(笑)冗談で言ってんじゃないんだよ。これはすごかったね
樹木:そんなこと言ってた?
小林:大道具で使ってた材木持ち上げてドーン
橋爪:女高倉健
樹木:忘れちゃうってどういうことだろ
小林:それは最高に頑張った作品なんだよね、みんなが。数々ある同じシリーズでも
橋爪:むしろ責任感なんだよな。俳優って現場入るときある種興奮状態になるから気に食わない時って今でもあるもんな。例えば相手役の人がね、たまにはとんでもない人も来るわけ.困ったなと思ってるわけさ。でもちゃんと仕上げなきゃなんない
樹木:杉村春子さんが昔「性格なんて悪くたってなんだって構やしないのよ!お芝居の下手な人って大っ嫌い!!」(笑)私その時は、変なこと言うなって思ってたのね。だけどだんだん役者やってくると、自分のこと棚に上げて、ほんとにその言葉いいなって思うことあるわね
橋爪:あの当時から映画のバイプレイヤーの人って芝居上手かったよな~ほっといたら埋もれそうな人間を拾い上げて演じるのが大好きだった
樹木:私もそう言う意味ではスターになれない。ね. あなたもよく東映ニューフェイスになれましたね。スターになろうと?
小林:いやっ、僕は結婚する時、女房に「何も夢は持たないでくれ」言ったの.
とりあえず1日3回の飯は食わせるけど、それ以上夢は持たないでくれと.ギャングA、Bの役とか、撃たれて落ちる。それに集中してやってきたんですよ.だから未だにそれがずっと続いてるんです。志が低いっちゃそれまでですけど、こういう俳優像を作っていくとか僕は全くないんですよ。食えればいいというね。お恥ずかしい話だけど
橋爪:なんで俺(の膝)を叩くんだよ
樹木:応募する気にならないもんね。当時の役者は美男美女が定説だった.鏡見ちゃ、あ~もうこりゃダメだっていう
小林:願書出すとき、東映ニューフェイス募集って書かなきゃいけない.住んでるところから出せなくて、隣町の駅のポストから出した.郵便局の人たち知らないじゃないですか。恥ずかしい気持ちがあったから
橋爪:恥ずかしくても、受けようという気持ちがあったんだろ?
小林:何とかして東京に行こうと。おれ、お山の向こうはなにかしらって。でてったことないんですから。(映画は)小学6年まではよく見た。
樹木:橋爪さんはなんで文学座受けたの?
橋爪:行くとこなかったから。行こうとは思わなかったけど、なんとなく文化の匂いがするじゃない。いよいよ行くとこなくなって、毎日新聞か何かに記事が出たんだよ「文学座が10年ぶりに研究生を募集します」って
樹木:戦後初めてって感じだったね。あたしも行くとこなくって。ニューフェイスって選択肢は?
橋爪:ないよ。体はちっさいし、顔もたいしたことない
樹木:それはわかってたんだ。じゃ、一緒だね(笑)みんな同じ時代に役者になって、それも大した志もなくて行きがかり上なって、何十年かたってボクらの時代ていうのに出てるわけよ
橋爪:いいんですか俺達で
樹木:面白くない時はテロップで「こんな事を話そうとしている」(笑)出るんじゃない?
樹木希林は孫の内田伽羅を「ホームビデオがうまく撮れないから」という理由で映画のオーディションに。
本人は役者より数学が好きなのだそう
小林:フィクション好きがいいことだなと。現実逃避みたいなとこがあるからね。面白いほうに育っていく。
橋爪功の妻は、6~7年前から脚本を書いている
橋爪:若い頃に俺と結婚しちゃってその才能を潰しちゃったんだ