中村:(西加奈子の直木賞受賞の知らせを聞いて)泣いちゃったもんね。テンパっちゃって。誰かに伝えなきゃって、又吉くんにメールしたの。「とったよ」って。そしたらね、この人も泣いててね・・ 記者会見もかっこよかったよ。
又吉:「本屋に行って1冊買ってください」っていう
中村:言った時は「いいこと言うたった」って感じがちょっとある?(笑)
西:嫌な奴やな
西:「直木賞バブル」今すごいオファーいただいて、この番組も「この二人じゃないと出たくないです」
又吉:そんなこと言ってくれたんですか。スタッフさんとかに僕らどう思われてんやろ
西:改めて思たんやけど、M-1とかキングオブコントとか、ようやってんなあ。うちら、待つだけやん。だって書き上げてんやから。「用意、スタート!」で書いて言われても無理やん
又吉:緊張してな、わけわからんこと言うてもうたらどうしようって。
中村:たまにさ、ネタ考えて又吉くんに採点してもらう時あんの。
西:うっそ。小説書けや!(笑)何をしとんねん。
又吉:中村さんのピンネタ、メチャおもろいねんで(爆笑)「誰かにあげていいよ、又吉くんの後輩にでも」て言われるんですけど結構独特で、あげたくない。
■芸人と作家の出会い
又吉:劇場で書いてたフリーペーパーで、中村さんのデビュー作を僕が紹介して、会わしていただいたんですよ。「めちゃくちゃ好きなんです」で、ランチしたの。
中村:お笑い芸人さんが来るって言ってたからすごいテンション高い人がいると思って。ちょっと辛いなと思って 行ったら、薄暗い場所に薄暗い人がいる(笑)俺幽霊とか見たことないけど、もしかしてこれは・・ものすごく最初怖かった。
「今日はありがとうございます」て言われたから
又吉:本読んだら、結構怖い方なんかなっていうのがあったんで。僕ら一切テレビとか出てなくて、一方的に知ってる。むちゃくちゃ優しくて。 年に1回あるかないかのテレビ出演で、スベったりした日に中村さんに電話して「地獄です。終わりです」そしたら「大丈夫だよ、飲みに行こう」サシで飲んで「大丈夫だよ」
西:初めて会った、同い年の作家(37歳)。
中村:8年前。昔、若干酒癖が良くなかったんだよ西さん。全然絡んでは来ないけど。
又吉:1回、西さんが渋谷で絵の作品展をやった時、中村さんもいらっしゃって。西さんが動物の絵を描いたんですよ。「又吉さん、あの虎なんて言ってる?」「何見てんねんって言ってます」西さんが一人でケラケラ笑って。中村さん「ほうなるほどね」
西:地獄・・地獄(笑)
■作家になった理由
西:アルバイトやってて、情報誌でライターの仕事もやってた。美味しい以外わからへん。お茶とか。どこ産のを使ってとかいうよりも、持ってきてくれはった人にめっちゃ触れたいことがあるねん。そっちのが面白いけど情報誌にいらんやん。情報として。それを25歳ぐらいの時書いたらめっちゃ楽しいってなって。
又吉:僕が落ち込んでいる時以外、真面目な話したことないですね。「中村さんの作品で、暗い人出てくるやないですか。自分共感できる部分なんですけど、中村さん明るいやないですか。なんでですか?」てめっちゃアホな質問を、酔うた勢いでしたら僕の座右の銘になってんですけど「俺ね、『暗い』ことで、人に迷惑かけたくないんだよ」極論ですけど、俺ちょっとだけ翌日から変わりましたもん。
西:肯定したっていいんだよ。小説なんか全部暗いからね。人間が人間の体で書いてる限り、明るい人なんか絶対おらへんやん。
中村:ものすごい暗い子供やったから。高校に行けなくなったこともある。他人がいっぱい集まって、机と椅子がある。意味わかんなくて。こんな苦しいところにいられないって。腰痛くないけど腰痛いって嘘ついて休んだり保健室行ったり。その時に太宰治の本を読んだ時にみんなが思うようなこと、つまりここに、僕がいると思っちゃっていっぱい読んで。
西:周りは多分、暗いと思ってへんかったんやろ
中村:演技をし続けてることに疲れて。急にスイッチが切れて学校へ行けない、と。多分人間嫌いだった。でも考えてみれば「人間が書いた小説に救われてる」てこと。こんだけ好きなら書いてみようと思って書いたら非常にしっくり・・笑いは、回路がややこしんだけど、瞬間的に来てさ、気がつくと笑ってるのが救い。
西:又吉さん、これは長所でもあるねんけど、圧倒的に浮いてる(笑)又吉さんだけ見てるせいかもしれんけどひな壇で「ちょっとちょっと!」いうの、遅れてる。
又吉:綾部が立ったら僕も立つっていう。ややこしいんだけど「人間なら、この時どんな反応をするか」っていうのと本来の自分の反応にズレがある(笑)
中村:テンション低いよね。上がる時ってあるの?
又吉:ありますあります。表情で笑えてない時があるかもしれないんですけど。子供の頃、国語の時間で順番に読んでいくやないですか。あれが、ずっと笑ってしまって真面目に読めないんですよ。文章が綺麗やから、次に何が起こってもおもろい。読めば読むほど緊張感でおもろくて。
■作者は読者の成れの果て
西:ホンマにそうやない?自分が何を読んできたかわかる。又吉さんて、一切小説を批判的に読んでこらへんかったなって思った。だってあんだけ読んでたら、メソッドが分かるわけやん。教科書っぽい小説やったらどうしようとか、そんなことないって思いつつも読んでたらなんぼでも批判的に読めるのに、そんなんなかったから泣けてきた。
又吉:ムチャクチャ集中して何時間もかけて統一してかけた思ってたのに3枚ぐらいっかかけてなかったり。エッセイやったら10枚20枚書けてる感覚なのに。
中村:(脳の)特殊なとこ使ってんだと思うよ。人間あまりにも集中しすぎると、ほとんど書いた記憶がなくて。お腹がめっちゃすく、みたいな。
■信仰
西:信仰ってあるじゃない。何かを信じる。でもやっぱ同じ信仰でもこんなに違うもの書くんやねって。
中村:同世代、同い年やから、テーマが偶然似るときがあるんだけど、全然アプローチが違うのよ。
又吉:「教団X」って予言になってるようなのがあるじゃない?
中村:イスラム国の兵士の人たちも、まずあそこに集まろうとするのを止めたい。宗教は人に安らぎを与えるものなんだけど、そういうのを利用して人を殺害する方向に誘導する。それが許せなくて。絶対やめてくれ、という思いを込めて。核のようなことは何度でも起こるから。
西:作家になって思うのは、ニュースとか、よう見いひんかった。拉致のこととか、ご家族のことが辛くてよう見いひんかった。テロがあって何百人死にました言うとニュースが入ってきたところでな、遠かったん。「何百人が死んだ」って塊でしか(頭の中に)入ってこなくて。ナイジェリアで昔ジェノサイドがあって隣人が殺し合うことがあったけど、いくら勉強しようと思っても覚えられへんのやな。チママンダ・ンゴズイ・アディーチェって作家がおるんやけど「半分登った黄色い太陽」に書いた。一人づつの人生が死んだということがやっとわかった。小説を読んで。小説でやっとわかった。
中村:物語を読むことは、想像力を働かせる手助けになると思う。
朝から濃い話ええ話