小林:同世代はキャラがかぶるっていうか。キャラは二人いらないっていうか。なかなかいないんですよ。共演のチャンスがない。
河毛:「ナニワ金融道」の時、小林さんが「僕は端正だから」って。今でも覚えてる。
※時折清志郎の「トランジスタラジオ「デイドリームビリーバー」流れ。小林薫と三浦友和は「極悪がんぼ」が初共演。
河毛:友和さんはミュージシャンだったんだよねぇ
三浦:憧れていただけなんですよ。それで食っていきたいとちょっと勘違いしてた時期があってですね。同級生に忌野清志郎がいて、高校(都立日野高校)の時にデビューするわけ。普通に接する友達ですからね、彼の天才さ加減に気付いてない。自分と同じラインにいるから出来そうだって。でも彼が頭角現すと「あ、こいつ天才なんだ、自分とは違うんだ」って。そこらへんに気づくのが遅くて俳優の道に入っちゃった。
小林:世の中に知られるようになっても交流はあったんですか
三浦:年に1,2回。あとは彼らのレコーディングにコーラスとか6曲ぐらい参加したり。ステージに出たり。清志郎本人の基本は「伝えることはテクニックじゃない」影響されましたね。
河毛:芝居も一緒で、でも、テクニックが全くなかったらダメでしょ。俳優は職業じゃなく客観評価。ミュージシャンでもスポーツ選手でも「この人下手」とか。役者はシェークスピアを劇団で一生懸命やって上手になっても食えない計算が多い。
小林:僕は食べられないってのが当たり前だと思ってましたからね。バイトとか、たまにしてました。でも僕も「こんなに頑張ってるのになぜバイトしなきゃいけないんだ」やってられるかって、1年間バイト辞めたことがある。25歳ぐらいの時。その1年間どうやって食ってたか思い出せない。
河毛:普通は「やってられない」って言って役者を辞めるんですよ。そういう人じゃないと役者として続けられない。
三浦:「突っ立ちの2枚目」
小林:僕もそうやって言われてみたい(笑)
三浦:そういう役柄ばっかりで、抵抗感あるんですよ。ショーケンさんとか優作さんがもてはやされた時代。世の中の反感買ってるだろうなって後ろめたさすら感じて。それが自分の財産になってることに気づくのは30~40になって。
小林:俺は「アングラ界の順風満帆」だからねぇ。なんの起伏もないのが逆にコンプレックス。アングラ界でベンツ乗って銀座で飲んでるの俺だけ。
河毛:アングラ界の風上にも置けない。
小林:女の人に寄生するのダメなんですよ。女の人に出してもらうのってダメ。
河毛:女の人から上手にお金もらえそうな風に見える。「夫婦善哉」やったから。
小林:やめてくださいよものすごく印象悪くなる。
三浦:飲む打つ買うは芸の肥やし、落語家さんにホントかどうか聞いたら「ん、関係ない、そういう人もいるってだけ」
小林:そういう人も含めて「問題のない人のドラマ」ってやらないわけじゃないですか。なんだか支障のある問題のある人たち、共鳴する部分に身を置く。正当化する理由は全くないけど。
三浦:衣食住だったら「住」にこだわる。収入が10万しかなくても2万4千円の家賃に住む。一人の空間を大事にしたい。
小林:中古のマンションを買おうとしたら、バブルはじけてて銀行がお金かしてくんなくて。困って。こんな稼業は銀行の信用がない。休まるところってあるんですかね、奥さんがいても。
三浦:休まりますね。一番安心してられる。
河毛:なるほど~(笑)
結婚生活
小林:同じ屋根の下に別の人格の方が一緒に住まわれるんですよ?大丈夫ですか?
三浦:(河毛さんは)経験者ですから
河毛:小林さんは、でも、2回目でしょ?友和さんもちろん1回目。
三浦:好きな人と一緒にいたいから結婚するんですよね。
小林:負荷を覚悟して・・
三浦:いや、覚悟できてないんですよ。後で必要だったなと思う。
小林:最初に考えたら踏み込めないですよね。
三浦:まず浮気しないことですよね
小林:それ、テレビ用ですか(笑)絶対モテない訳ないでしょ。釣ってもいないのが飛び込んでくるの、浮気じゃないですよね。
三浦:浮気する気持ちは当然分かるんですよ。決まりごとを1個作っとかないとってことです。信心深い訳じゃないけど「バチが当たる」ってないですか?
小林:守ったり言い訳したり
三浦:てことですよね?
小林:上から目線(笑)
河毛:バチがあたって生まれてきた気もするし。
小林:家族を守ろうとする気持ちはないわけじゃないですよね。成り行き構わず。うちの場合は年の差があって、俺が先に逝くからってふっと思ったら(子供が)できちゃって。この年になるまで神様が控えとけと。それで子供が出来たのかな。
三浦:子供を作るとか作らないとかってのは不遜な言い方。
小林:ま、負担だなぁと思ってやけ酒飲みに行ったこと何度もありますよ。言うこと聞かない瞬間に、イライラしてると泣き出して「ママん所に行く!」となった時に。
河毛:色々考えてると何もできないですよね。ちゃんと考えなさいと社会が言い過ぎる。三浦さんとこは、お子さんが立派に俳優を選んで。役者同士の会話とかあるの?
三浦:心配ですけどね。大学から寮生活で出ちゃってるし会話があまりない。俳優は歳とっただけで上手くなるとかないし。アドバイスなんてない。
小林:いい年こいて照れ屋とか言ってんじゃないよって思うけど後輩の前でなんか言わなきゃならない時メロメロになってしまう。
三浦:裕次郎さんもひばりさんも52歳で亡くなってる。僕ら若い時勝さんとか若山さんとか怖かった。あの方がたの一番怖かったのは40代の時。自分たちが60超えたら周りにそういう先輩がいない。「アウトレイジ」に出させてもらったとき「昔仁義なき戦いってあったよね。違う作品だけどあんな感じだよ」見たらその方たち(当時)30代。
小林:「東京物語」(1953)子供の頃見たとき老人がやってると思ったら、笠智衆さん40代後半、東山千栄子さん50そこそこ。こないだのも吉行和子さんも橋爪さんも70超えてるのに若く見えるんですよ。決定的なのは戦争をくぐって生き死にを見ていること。いいとか悪いとかじゃなく世代的にくぐってきた人達と僕らでは違う。
三浦:自分の子供たちでも教師に対して敬語使わない関係になっちゃいましたしね。若い子達と平気で飲みに行けるスタンス、20代の頃嫌でしたけど。
小林:ショックなのは、小泉今日子に「お前は小学生か」って(爆笑)精神年齢ってありますよね。引き算をしないと。だいたい「ボクらの時代」に出る3人じゃないでしょ。